更年期障害は女性ホルモンが減少することによって起こります。これはもうお分かりかと思います。だとしたら、それを治療するには女性ホルモンを補充してあげれば良くなるのでは?と考えるのは真っ当です。
元々自分の体内で活発に生産されていた女性ホルモン、それが生産されなくなってきたのであれば外部から補充する、そんな治療法がHRTという治療法です。
HRTは「Hormone Replacement Therapy=ホルモン・リプレース・セラピー」の略で、日本語には「ホルモン補充療法」と訳されます。HRTは更年期障害の治療法として欧米で古くから行われてきており、日本でもすでに一般的な治療法として確立しています。
HRTは欧米では40年前くらいから一般的に治療法として採用されているのですが、日本では現在で10年ほどの歴史しかありません。これは日本と欧米の病気に対する考え方の違いもあると思いますが、更年期障害を明確に病気の元として捉えるか、我慢すべきものと捉えるかという価値観の違いが関係していると思います。
更年期障害が見られるようになっても、日本の場合は年齢が年齢だから仕方ない、我慢していれば次第に通り過ぎるものという認識に留まっており、欧米のように不快感があるだけでも治療の対象とする考え方とは確かに違います。
更年期障害が単なる不快感を伴うだけのものであれば、痛みを我慢することが美徳である日本人なら治療の対象として考えるのがもっと遅れていたかも知れません。ですが更年期障害の本当にリスクである骨粗しょう症や高脂血症がクローズアップされるにしたがって、閉経後の健康に対して脅威であるという考え方が広がり、現在のように積極的な治療が行われるようになりました。
QOL(Quality of life=生活の質)という考え方が医療に採り入れられるようになると、閉経後の人生を健康に過ごすためには更年期障害をキチンと治療する必要があるという結論に達します。平均寿命を考えると閉経後も約30年ほど人生が続くことになります。骨粗しょう症や高脂血症が発症してから寝たきりや病院通いでこの30年を過ごすのか、健康的に活き活きと過ごすのか。この大きな違いを決するのは更年期障害の早期治療です。
実際にHRT治療を行った人のデータを見ても、のぼせや過度の発汗、性器における不快感などを伴う更年期症状は明確に改善されています。人によって効果や、その効果が表れる時期については差があるものの、おおむね12ヶ月以内に改善を実感できるようです。また、更年期障害本来のリスクである骨粗しょう症と高脂血症に対しての効果についてはHRTの内容によっても異なるため、別の項でお話しします。