2008年2月アーカイブ

更年期障害の東洋医学による処方


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東洋医学による更年期障害の解釈とは、「腎」が持つ機能のうち、陰と陽のバランスが崩れてしまった状態、つまり「腎虚」であるということはお話いたしました。
それではこの腎虚はどのようにしてケアすれば良いのでしょうか。

陰と陽、どちらの機能が低下してもバランスは崩れるので腎虚となるのですが、更年期障害の場合はほとんどの人が陰の機能低下が原因であるため、漢方では腎のうち陰の機能を高める処方がなされます。これを漢方風に言うと「腎陰虚・肝火鬱結のため腎陰を補う」となります。「肝火鬱結」とは腎虚のため肝にも問題が起こり、体内の余分な熱がこもってしまっている状態のことです。
さて、これを解決するために処方されるのが「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」です。これらの漢方薬は、「肝腎の陰分を滋養する」とありますので、先ほど申し上げた腎陰虚の原因となっている腎陰の能力を補い、高める効果があります。
西洋医学と違い、東洋医学は病巣そのものを薬で攻撃するのではなく、体質をその病気に負けないものに改善していくという考え方で成り立っています。西洋医学のHRTは不足してしまった女性ホルモンそのものを外部から補うことで更年期障害の克服を目指しますが、東洋医学・漢方の場合はこれらの漢方薬によって腎陰の力を高めることによって自分の力で女性ホルモンが分泌できるように体質の改善を目指します。
この処方は更年期障害が発症してしまってからの治療法ですが、普段の食生活や生活習慣によって病気を予防するという漢方の考え方をそのまま普段の生活に採り入れることが出来ます。年齢としては更年期障害が症状として見られる前、つまり40歳を過ぎた頃から体自身が健康になろうとする能力を妨げることなく充分な睡眠やストレスの発散、適度な運動を心がけるとそれだけでも全然違います。冷たいものの食べすぎや辛いものの食べすぎなど、極端な食生活は腎陰または腎陽の力を弱めてしまいますから、注意しましょう。食品としては、枸杞子、黒豆、黒胡麻などは腎の力を高めるので、更年期障害には効果があります。薬剤としてではなく、養生としての漢方(普段から習慣づけて摂取する漢方)としては六味地黄丸(ろくみじおうがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)が良いとされています。
更年期障害は特別な病気ではなく体の変化によるものだけに、このような東洋医学の処方は効果的なのです。

漢方による更年期障害の治療法


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現在更年期障害の治療法として一般的に採用されているHRTは体内に不足している女性ホルモンを本来の周期にあわせて補充することによって体の生理リズムを取り戻して活性化することを目的としています。
HRTはあくまでも西洋の医学ですが、このように体のリズムを取り戻すことによって他の部分の健康を目的とする治療法はむしろ東洋医学の思想に近いものがあります。
そんな東洋医学の結晶である中国の漢方にも更年期障害をケアする治療法はちゃんとあります。他の治療法がダメだったという人でも漢方なら効いた、という例はいくらでもあります。それでは、漢方による更年期障害の治療法とはどんなものでしょうか。

まず、漢方医学によると女性の体は7の倍数で節目を迎えるとされています。女性機能をつかさどる「腎」の働きは7歳で活発になり始め、14歳で月経が始まる。28歳で腎気はピークを迎え、42歳で衰退する。そして49歳で衰弱してしまい、閉経する。これが7の倍数で訪れる女性の体に関する節目です。年数において、おおむね西洋医学と合致しています。

さてここで言う「腎気」、これには東洋医学の概念通り陰と陽の機能があります。陽とは体を温める火の役割があり、反対に陰には体の余分な熱を冷ましたり潤したりする働きがあります。健康な体においては陰と陽のバランスが取れているのですが腎気が弱まってくると(漢方では「腎虚」と言います)、陰と陽のうちどちらかの機能が低下します。片方の機能のみが低下するということは陰と陽のバランスが崩れますので、体に色々な問題が発生します。更年期障害の症状がほてりや多汗など、暑い時に見られるような状態になるのは、陰の機能が低下していることを表しています。反対に、冷え性の人は陽の機能が低下するため、暖められなくなり手足の先が冷えたりします。

いったん陰と陽のバランスが崩れてしまうと、のぼせや多汗などのせいで不眠気味となり、さらに体力が低下するという悪循環に陥り、腎虚は加速度的に進行してしまいます。というのも、睡眠は体の熱を鎮める効果があるため、陰と陽では陰の機能を持っているとされているため、不眠気味になるということは自ずと陰の力が弱まっていることになります。

西洋医学と全く視点が違いますが、見事に更年期障害の症状やその進行性を言い当てています。東洋医学の理論にも大いに整合性があって、その効果が期待できるのはこのためです。それでは次の項で、東洋医学による更年期障害の治療法についてお話しましょう。

HRT


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HRTが更年期障害の治療法として有効であることは別の項でお話しました。
それでは、実際にHRTとはどんな治療を行うのでしょうか。
HRTで使用するホルモンやその用法について具体的にお話します。

HRTに使用するホルモンには二つの種類があります。一つはエストロゲン、もう一つは黄体ホルモンです。エストロゲンは卵巣から分泌される女性ホルモンそのものですので、閉経によって減少するのであれば外部から補おうというシンプルな発想です。黄体ホルモンも女性ホルモンの一種で、妊娠を継続・維持するためには欠かせないホルモンです。これらのホルモンを外部から補充することによってHRTが可能になります。

HRTで使用される薬剤についてお話します。HRTの中でも特に重要なエストロゲンには作用の強さや使用時期によって薬剤が異なります。それぞれをご紹介しておきましょう。

エストロゲンの種類はE1、E2、E3と分類されています。このE1からE3までの分類は作用の強さによって分類されており、一番強いのがE2で、E1、E3と続きます。E2はエストラジオールという薬剤で、3つの中では最も強い薬剤です。ピルとしても使用されている薬剤で、女性ホルモンの状態をコントロールする作用を持っています。E1やE3が効かない、つまりホルモン状態を制御できない場合に使用されます。使用の時期は閉経前。

次に強い作用を持っているのがE1のエストロン。卵巣の機能が停止した後で更年期症状を抑えるためには、まだある程度エストロゲンに強さが必要な時期ということで、閉経直後に処方されます。

最後にE3のエストリオール。エストロゲンの中では最も作用が弱いため、副作用もほとんどありません。そのため、HRTの治療を開始した際にはまず使用される薬剤です。これで効果が見られない場合はE1やE2へと移行していきます。作用が弱いということで、閉経直後ではなく閉経後しばらく経ってから使用されるのが一般的です。

またHRTには薬剤の選択の他にもホルモン製剤の服用方法にも工夫があります。例えば逐次的併用法と呼ばれる方法では、21日間エストロゲンを服用し、後半の10日間には黄体ホルモンを併用します。そして7日間は休薬、これを繰り返します。これによって、閉経前のホルモン環境に限りなく近い状態を再現することができ、効果が期待できます。これで効果が見られない場合は周期的併用法や連続併用法など様々な方法があります。あくまでも減少してしまった女性ホルモンを再現するための治療なので、自然に生産された状態に近づけることにより、体が本来の習慣を取り戻すキッカケを作りやすいように工夫されています。

更年期障害と女性ホルモン


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更年期障害は女性ホルモンが減少することによって起こります。これはもうお分かりかと思います。だとしたら、それを治療するには女性ホルモンを補充してあげれば良くなるのでは?と考えるのは真っ当です。

元々自分の体内で活発に生産されていた女性ホルモン、それが生産されなくなってきたのであれば外部から補充する、そんな治療法がHRTという治療法です。

HRTは「Hormone Replacement Therapy=ホルモン・リプレース・セラピー」の略で、日本語には「ホルモン補充療法」と訳されます。HRTは更年期障害の治療法として欧米で古くから行われてきており、日本でもすでに一般的な治療法として確立しています。

HRTは欧米では40年前くらいから一般的に治療法として採用されているのですが、日本では現在で10年ほどの歴史しかありません。これは日本と欧米の病気に対する考え方の違いもあると思いますが、更年期障害を明確に病気の元として捉えるか、我慢すべきものと捉えるかという価値観の違いが関係していると思います。

更年期障害が見られるようになっても、日本の場合は年齢が年齢だから仕方ない、我慢していれば次第に通り過ぎるものという認識に留まっており、欧米のように不快感があるだけでも治療の対象とする考え方とは確かに違います。

更年期障害が単なる不快感を伴うだけのものであれば、痛みを我慢することが美徳である日本人なら治療の対象として考えるのがもっと遅れていたかも知れません。ですが更年期障害の本当にリスクである骨粗しょう症や高脂血症がクローズアップされるにしたがって、閉経後の健康に対して脅威であるという考え方が広がり、現在のように積極的な治療が行われるようになりました。

QOL(Quality of life=生活の質)という考え方が医療に採り入れられるようになると、閉経後の人生を健康に過ごすためには更年期障害をキチンと治療する必要があるという結論に達します。平均寿命を考えると閉経後も約30年ほど人生が続くことになります。骨粗しょう症や高脂血症が発症してから寝たきりや病院通いでこの30年を過ごすのか、健康的に活き活きと過ごすのか。この大きな違いを決するのは更年期障害の早期治療です。

実際にHRT治療を行った人のデータを見ても、のぼせや過度の発汗、性器における不快感などを伴う更年期症状は明確に改善されています。人によって効果や、その効果が表れる時期については差があるものの、おおむね12ヶ月以内に改善を実感できるようです。また、更年期障害本来のリスクである骨粗しょう症と高脂血症に対しての効果についてはHRTの内容によっても異なるため、別の項でお話しします。

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