HRTが更年期障害の治療法として有効であることは別の項でお話しました。
それでは、実際にHRTとはどんな治療を行うのでしょうか。
HRTで使用するホルモンやその用法について具体的にお話します。
HRTに使用するホルモンには二つの種類があります。一つはエストロゲン、もう一つは黄体ホルモンです。エストロゲンは卵巣から分泌される女性ホルモンそのものですので、閉経によって減少するのであれば外部から補おうというシンプルな発想です。黄体ホルモンも女性ホルモンの一種で、妊娠を継続・維持するためには欠かせないホルモンです。これらのホルモンを外部から補充することによってHRTが可能になります。
HRTで使用される薬剤についてお話します。HRTの中でも特に重要なエストロゲンには作用の強さや使用時期によって薬剤が異なります。それぞれをご紹介しておきましょう。
エストロゲンの種類はE1、E2、E3と分類されています。このE1からE3までの分類は作用の強さによって分類されており、一番強いのがE2で、E1、E3と続きます。E2はエストラジオールという薬剤で、3つの中では最も強い薬剤です。ピルとしても使用されている薬剤で、女性ホルモンの状態をコントロールする作用を持っています。E1やE3が効かない、つまりホルモン状態を制御できない場合に使用されます。使用の時期は閉経前。
次に強い作用を持っているのがE1のエストロン。卵巣の機能が停止した後で更年期症状を抑えるためには、まだある程度エストロゲンに強さが必要な時期ということで、閉経直後に処方されます。
最後にE3のエストリオール。エストロゲンの中では最も作用が弱いため、副作用もほとんどありません。そのため、HRTの治療を開始した際にはまず使用される薬剤です。これで効果が見られない場合はE1やE2へと移行していきます。作用が弱いということで、閉経直後ではなく閉経後しばらく経ってから使用されるのが一般的です。
またHRTには薬剤の選択の他にもホルモン製剤の服用方法にも工夫があります。例えば逐次的併用法と呼ばれる方法では、21日間エストロゲンを服用し、後半の10日間には黄体ホルモンを併用します。そして7日間は休薬、これを繰り返します。これによって、閉経前のホルモン環境に限りなく近い状態を再現することができ、効果が期待できます。これで効果が見られない場合は周期的併用法や連続併用法など様々な方法があります。あくまでも減少してしまった女性ホルモンを再現するための治療なので、自然に生産された状態に近づけることにより、体が本来の習慣を取り戻すキッカケを作りやすいように工夫されています。